
先日、文春オンラインにこんな記事が出ていました。
「フルーツは体にいい」の罠…膵臓がん発症率が欧米の“1.5倍” 内科医が警告する果物と内臓脂肪の危険な関係
内科医の奥田昌子先生が、日本人の膵臓がんと内臓脂肪、果物に含まれる果糖との関係について解説されています。
要点をまとめると、こんな内容です。
・日本の膵臓がん発症率は1970年頃から増えている
・危険因子の一つとして内臓脂肪の蓄積が考えられる
・糖度の高い果物を食べすぎると、果糖の摂取量も多くなる
「フルーツ=体にいい」
と思っている方は多いですよね。
もちろん、果物を食べたから膵臓がんになるという単純な話ではありません。
ただ、体にいいと思って毎日のようにたくさん食べていると、知らないうちに果糖の摂取量が増えている可能性があります。
何でもそうですが、
体にいいものでも食べすぎれば負担になるんですね。
僕が現場で見ているのは、診断名がつく前の不調です
文春の記事は「膵臓がん」という病気についての内容でした。
一方、僕が内臓療法の現場で向き合っているのは、
病院の検査では大きな異常が見つからないけれど、身体の不調が続いている方です。
例えば、こんな症状です。
・あまり食べていないのに、すぐお腹がいっぱいになる
・胃もたれが続いている
・食後に吐きそうな気持ち悪さがある
・みぞおちとへその間が痛い
・左肩のこりだけが取れない
・左側の背中に痛みが残る
もちろん、こうした症状があるからといって、膵臓に病気があるとは限りません。
胃や腸の張り、横隔膜の動き、首や肩の筋肉、背骨や神経など、いろいろな可能性があります。
だからこそ、
痛い場所だけを見ていても、原因が分からないことがあるんです。
なぜ膵臓からの信号が背中の痛みとして現れるのか
ここから、少しだけ神経の話をします。
少し難しく感じるかもしれませんが、関連痛を説明するために大切なところです。
難しければ「では、なぜ左肩に出ることがあるのか」まで飛ばしてもらってもOKです。
膵臓から発生した感覚信号は、内臓求心性線維を通って脊髄へ入ります。
この信号の多くは、交感神経と一緒に走る内臓求心性線維から腹腔神経叢や内臓神経を通り、胸髄領域の後角へ入力されます。
そして脊髄の後角には、内臓からの信号だけでなく、皮膚や筋肉などからの感覚信号も入ってきます。
つまり、
内臓からの信号と身体の表面からの信号が、脊髄内の同じ二次ニューロンへ収束することがある
ということです。
脳は皮膚や筋肉からの感覚には慣れていますが、内臓からの感覚を細かく判別することは得意ではありません。
そのため膵臓から入ってきた信号を、みぞおちや背中など、離れた体性領域から来た痛みとして認識することがあります。
これが関連痛です。
膵臓由来の痛みが、みぞおちだけでなく背中にも広がることがあるのは、この仕組みが関係していると考えられます。
関連痛と内臓体性反射は、同じではありません
もう一つ大切なのが、内臓体性反射です。
関連痛は、内臓から来た感覚信号を、脳が身体の別の場所から来た痛みとして認識する現象です。
一方の内臓体性反射は、内臓から脊髄へ入った信号によって、同じ脊髄分節と関係する筋肉や皮膚などに反応が現れる現象です。
内臓からの信号が繰り返し入力されると、脊髄後角のニューロンや介在ニューロンが刺激を受けやすい状態になります。
いわゆる分節性促通です。
その結果、同じ分節と関係するα運動ニューロンやγ運動ニューロンなどの活動が高まり、筋肉に持続的な緊張や圧痛が現れる可能性があります。
簡単にまとめると、
関連痛
内臓からの信号を、別の場所の痛みとして感じる
内臓体性反射
内臓からの信号によって、関係する筋肉などに緊張や圧痛が現れる
という違いです。
同じように見えますが、厳密には少し違うんですね。
脊髄だけで完結しているわけではありません
膵臓から脊髄へ入った感覚信号の一部は、脊髄内で反射を起こすだけでなく、上行路を通って脳幹や脳へ伝わります。
そこで自律神経反応や痛みの認識に関係するさまざまな領域へ入力されます。
さらに上位中枢からは、痛みを抑えたり、逆に増幅したりする下行性の調節信号が脊髄へ戻ってきます。
ですので、実際に起きている関連痛や筋緊張は、
膵臓から脊髄へ入った信号
→脊髄分節での反射
→脳幹や脳への上行
→上位中枢からの下行性調節
といった複数の神経経路が重なって現れている可能性があります。
ただし、
「延髄のこの場所を経由したから、必ず左肩がこる」
というように、一本の決まった経路ですべてを説明できるわけではありません。
内臓の関連痛には個人差があり、別の臓器や筋肉からの信号も重なるからです。
では、なぜ左肩に出ることがあるのか
膵臓は上腹部の奥にあり、頭部から尾部に向かって左側へ伸びている臓器です。
ただし、
膵臓が身体の左側にあるから、必ず左肩に痛みが出る
という単純な話ではありません。
膵臓の感覚入力と関係が深いのは胸髄領域なので、医学的には上腹部から背中へ広がる痛みの方が一般的です。
左肩の痛みには、首や肩関節、筋肉、心臓、胃、横隔膜など、ほかにも考えるべき原因があります。
そのうえで僕の臨床では、
左肩こりや左背中痛が続いている方に、みぞおちとへその間の張りや圧痛があり、消化器系を含めて施術すると、肩や背中まで軽くなるケースを何度も見てきました。
僕が言いたいのは、
「左肩こり=膵臓」ではありません。
肩や背中だけを何度施術しても繰り返す場合は、内臓から続いている神経反射も含めて考える必要がある、ということです。
左肩や背中だけを施術しても変わらなかった方
開業して13年。
左肩こりや左背中痛で来られた方のお腹を触ると、みぞおちとへその間に張りや圧痛があるケースを数多く見てきました。
そういった方に対して、肩がこっているから肩を揉む。
背中が痛いから背中だけを施術する。
それでは、その場で少し楽になっても、また同じ場所に痛みが戻ってくることがあります。
なぜなら、
筋肉の緊張を起こしている信号の出どころが、その筋肉とは限らないからです。
腹部の張りや呼吸、食後に出る症状などを確認しながら施術すると、触っていなかった左肩や背中が軽くなることがあります。
ただし、施術後に変化が出たことだけを理由に、
「この人の膵臓が悪かった」
と医学的に診断できるわけではありません。
僕たち整体師は病気を診断できないからです。
大切なのは、最初から一つの臓器に決めつけることではなく、
・食後に症状が出るのか
・腹部のどこに張りや圧痛があるのか
・呼吸は浅くなっていないか
・背中のどこが緊張しているのか
・首や肩を動かすと痛みが変わるのか
こうした反応を総合して身体を見立てることです。
病気を見逃さないことが最優先です
膵臓がんは、早い段階では目立った症状が出ないことがあります。
また、上腹部や背中の痛み、原因不明の体重減少、食欲低下などが現れることもありますが、これらは膵臓がんだけに起こる症状ではありません。
・強い腹痛や背中痛が続く
・理由もなく体重が減ってきた
・皮膚や白目が黄色くなってきた
・尿の色が濃くなった
・便が白っぽくなった
・嘔吐や発熱を伴っている
こうした変化がある場合は、整体より先に医療機関で検査を受けてください。
これは本当に大切です。
内臓療法は、膵臓がんを診断したり治療したりするものではありません。
痛い場所だけでなく、身体全体を見る
当店では、膵臓の病気を診断したり、膵臓がんを予防したりすることはできません。
僕たちが見ているのは、
腹部の張りや圧痛、呼吸、姿勢、背中の筋緊張、食後に現れる身体の反応などです。
それらを確認しながら、
痛みが出ている場所だけではなく、身体全体のつながりを考えて施術していきます。
病院の検査では異常が見つからなかった。
でも、食後の気持ち悪さや左肩こり、左背中痛が続いている。
そんな方は、肩や背中だけでなく、胃や腸、横隔膜を含めて身体を見直してみてもいいかもしれません。
痛みが出ている場所に、必ず原因があるとは限りません。
「歳のせいかな」
で流してしまう前に、一度ご相談ください…
ご予約をお待ちしています。
【日本内臓療法 梅田店】
大阪府大阪市北区梅田1-2-2 大阪駅前第2ビル地下1階 58-2
北新地駅より徒歩2分/大阪駅より徒歩7分
この記事を書いた人
仲宗根 良達(なかそね よしたつ)
日本内臓療法 梅田店 代表
・Diplomate of Chiropractic Science(東京カレッジオブカイロプラクティック・2020年)
・JCR(日本カイロプラクティック登録機構)登録・WHO基準カイロプラクター(登録番号 0936)
・ジャパン・ヘルスサイエンス専門学院 補完代替医療課程(2年)修了
/カイロプラクティック・オステオパシー・推拿・心理カウンセリング
・著書『内臓を動かす』(ギャラクシーブックス・2017年)
2010年より施術に従事。大阪・梅田にて、医療機関で「異常なし」とされた胃もたれ・便秘・腹部膨満感などの内臓症状を中心に対応している。
カイロプラクティックで関節と神経系を、オステオパシーで全身・内臓へのアプローチを、推拿で東洋医学的な徒手療法を学んできました。
だから、胃もたれを胃だけで、腰痛を腰だけでは考えません。




